うつ病休職記 1日目

これは、ある会社に勤めている会社員が、初めてうつ病と診断された時の記録です。

この先どうなるかわからず、その不安を解消するため、また同じくうつ病に悩む人の話を聞きたいため、こうして日記を記します。

 

診断日~わたしがうつ病になった日

 

そのクリニックは、古い雑居ビルの八階にありました。

定員が4人ほどの小さなエレベーターを降りると、ドアを開けてクリニックの受付へ。

 

白をベースにした受付はとても静かな雰囲気でした。中には

・赤ん坊を抱えた男性

・たくさんの薬の名前が書かれたお薬手帳を読み直している女性

・首にタオルを巻いた中年男性

など、さまざまな人がいたことが印象的でした。

 

受付に名前を名乗ると、問診票を書くよう言われました。

症状を書く欄があったので、なるべく詳しく書いたほうが医師もわかりやすいかと思い、思いつく限りの症状を書いてみます。

・早期覚醒

・動悸

・不安

・死にたいという気持ち

・休日に何もする気が起きない

など。

「これらの症状が起きるようになったのはいつからですか」

という問いには「6月から」と記入。

 

問診票を提出すると、今度は「SDS」(自己評価式抑うつ性尺度)と呼ばれる調査票を渡されました。

SDSには「自分がいなくなったほうがいいと感じる」「幸福を感じる」といった質問が書かれており、「強くそう思う」~「あまりそう思わない」の4段階で答えます。

自分はこれらの問いかけに、ほとんど悲観的な答えを記入しました。

 

SDSも提出すると、診断までしばらく待つことに。

 

ーーまだ自分が病気だと診断されたわけではない。仮に病気だと診断されたとしても、それが悪いことだとは限らない。

 

頭ではそうわかっていても、「どうしてこうなってしまったんだろう?」「こうなる前にできることはなかったのかな?」という考えが、どうしても浮かんでしまいます。

 

1ヶ月半ほどメンタルの不調に悩まされる

問診票に書いた通り、体に異変が起き始めたのは6月ごろのこと。

 

その頃はとにかく仕事量が多くて、午前10時から午後10時まで働いて、PCを家に持ち帰って仕事して、深夜1時に寝る生活が続いていました。

すると動悸やめまいなどの症状が出始め、休日は布団からまったく出られない、という日々が続くように。

上司に訴えても、「自分はもっと辛い時期があった」「限界を越えた分だけ成長できる」というような答えが来るのみで、解決になりません。

7月になると心身ともに限界で、オフィスにいるだけでめまいがし、ストレスで叫びだしたくなるような状態に。家にいる時はひたすら泣いていました。

一度など、「命のダイヤル」にかけたこともありました。優しそうな声の男性が対応してくれて、症状を訴えながら、ひたすら嗚咽を漏らして泣きました。

ーーこのままだと本当に心が壊れてしまう

そして7月の中旬。人事に休職したい旨を伝えると、心療内科にかかることになったのです。

 

うつ病と診断

受付を済ませてから30分後。名前が呼ばれたので、診察室へ。

担当の医師はメガネをかけた30~40代の男性。

先生に症状をひとしきり話すと、彼は

「6月から体調悪かったんだ。もう少し早く異変に気付けなかったのかな?」

といったため、「やっぱり対応が遅かったのか」と思いました。

 

診断が終わると、先生は

「1ヶ月ほど仕事を休みましょう。仕事の復帰とか、転職とか、そういうことは考えてはいけません。とにかく休むことだけを考えてください」と言いました。

 

診察が終わると、受付の人から診断書を受け取りました。診断書は封筒に入っているため、内容が読めません。

「人事の人に、写真を撮って渡すよう言われたんですが」

と伝えると、彼女は診断書のコピーを渡してくれました。

そこには

「傷病名:うつ病

と、はっきり書かれていました。

それを見た時、わたしは思わず背を向けました。

わたしは心療内科にかかることは初めてではありません。高校生の時はある犯罪に巻き込まれて、そのケアで通院したことがあるし、大人になってからも、不眠やストレスでお世話になったことがあります。

それに、うつ病という病気に対しても、偏見などはない方だと思っています。

 

それでも、自分がうつ病だとわかった時、何かが壊れてしまったような、道を外れてしまったような、そんな気持ちになりました。ひらがなで書いたって、「うつ」という言葉には何か独特の重みがあるような気がするのです。

 

診断書のコピーを撮影すると、人事に送信。

続いて支払いを終え、薬局で薬をもらうと、車で両親に迎えに来てもらいました。その日は土曜日だったので、弟も一緒です。

両親に「どうだった?」と聞かれたので、

「1ヶ月休めって言われた」とだけ伝えると、ふたりとも

「そう」と言うだけで、深掘りしないでくれました。

 

車に乗って、家族で焼肉屋へ行きました。あるお店からリニューアルオープンの割引券が送られてきたため、それを使うためです。

いちおう「心療内科にかかったあとで、焼肉屋なんて行くのは変だと思うんだけど」と言ったのですが、

母は「そんなときこそたくさん食べて元気を出さなきゃ」という考えでした。

 

焼肉屋ではタンとカルビの盛り合わせに、小クッパを注文。食欲は人並みにあったため、自分でも少し安心しました。

 

家に帰ると、東野圭吾の「鳥人計画」を読みました。昔に書かれた作品だからか、東野圭吾作品にしては少し読みにくいような……

 

夜はなんとなくネットサーフィンをして過ごしました。ここ数ヶ月、ずっと時間がなかったので、こうやってのんびり過ごすことはとても久しぶり。

 

ふっと気が緩むと、

「もうあの会社には戻りたくないな」「あの上司のあの一言はどうしても許せない」

という過去のことや、

「これから先どうすればいいんだろう」「仕事を辞めるとして、大した資格もない自分は何をやればいいんだろう」

と未来のことを考えてしまうため、なるべく何も考えないよう、読書かネットサーフィンで時間を潰しました。

 

今わかることは、うつ病は「過去も未来も考えてはいけない、今の自分と向き合うきっかけをくれる病気なのかな」ということです。

 

深夜、寝る前になんちゃってで座禅を組んでみました。6月頃から始めているのですが、少し気分が休まります。(うつ病にはなってしまったけれど。)

 

寝る時間になったので、「エチゾラム」「ゾルピデム」という薬を服用すると、床に入りました。眠気を感じる時間もないまま、すっと眠りについていました。